血友病とは?
一覧はこちら健常者の長男、血友病の次男・三男を育てる中で得た気づき。長男の理解と周囲の協力があっての豊かな成長
今回はご自身が血友病保因者で、3人の男の子のお子さんを育てている広川さんにお話を伺いました。3人のお子さんのうち長男は健常者、次男と三男は血友病です。家での生活や周囲との関わり方など、血友病のお子様を育てる中で日々感じていることを率直に語っていただきました。
ご自身の生まれた時の家族構成を教えてください
両親と姉が1人です。実は姉以外にも何人か兄や姉がいたのですが、長兄は血友病で生まれ私が3歳の時に、22歳で他界しています。また、次兄も乳児期に心不全で他界しているのですが、おそらく血友病だったのではないかといわれています。他にも健常者の三番目の兄と長姉がいたのですが、三番目の兄は交通事故で亡くなり、長姉は臨月に死産しています。長兄以外、私が生まれる前に亡くなっているので、兄や姉の存在を知ったのは物心がついてからになりますね。
血友病のことは昔から知っていましたか
兄達は物心つく頃には亡くなっていたので、身近なところから直接意識することはありませんでしたが、血友病という病名や膝が腫れるという症状についてはなんとなく聞いていました。しかし、兄2人の症状を目の当たりにしてということではないので、あくまで情報として知っていた程度だと思います。
血友病についてはご両親から聞かされていたのですか
はい。私が小学生の時には基本的な知識程度のことは聞かされていましたが、やがて、私が成長するにつれて、兄達のことを詳しく教えてもらうようになりました。
私の母は兄達が血友病と診断されたことによって、母は血友病確定保因者と判明していました。しかし、私自身が血友病保因者かどうかということは、子どもの頃はわかりませんでしたね。
遺伝子検査などで調べようと考えたことはありますか?
考えたことはなかったですね。仮に自分が血友病保因者だとわかったところで、何も変わらないですから。このような言い方はあまりよくないかもしれませんが、自分が血友病保因者とわかったとしても、治療などによって血友病の子が生まれないようにできるわけではないですからね。
今はご結婚もされて、お子さんがいらっしゃるとお聞きしています
はい、男の子が3人います。
長男は健常児で5歳、次男と三男が血友病児で3歳、2歳になります。
出産などでご自身が血友病保因者だから気をつけたことはありますか
血友病保因者も血友病患者と同様に出血傾向がある方がいるとは聞いていましたが、自分自身がこれまでに人と比べて血が止まりにくい、あるいはあざが多いなど血友病特有の症状を持っていると感じたことはないです。
次男の出産の際には私は血友病推定保因者として出産に挑みました。血友病に精通した先生と連携をとりながら総合病院での出産でした。その際に出産後の弛緩出血によって2L出血した経緯もあり、三男出産時には同病院であらかじめ自己血をとり、採血をして凝固因子の活性も調べました。採血の結果、私の凝固因子の活性は正常でしたので、特に治療をすることなく普通の出産となりました。心配されていた出産時の出血も250cc程度でした。
どのようにして病院を選びましたか
次男を出産する頃に元々転居を予定していて、転居先に最も近い病院が総合病院で周産期医療センターでした。またその病院は、小児の血友病に精通した他病院の先生とも連絡の取れる環境でもありました。これは偶然でしたが、とても恵まれたことでした。
日常生活で配慮していることはありますか。また、病院への通院はどれくらいの頻度で行かれていますか
子ども達はまだ小さく、そして男の子なので、ちょっとした怪我は毎日のようにしています。あまり神経質にならずに、子どもだからしょうがないなと思っている部分もありますね。大きな怪我さえしなければ、問題ないと思っています。
病院は月に1回通院しています。ヘムライブラという血友病の薬をもらいに行きます。
ヘムライブラは自宅で2週間に1回注射をするのですが、1~2年前から使っています。注射のおかげで、怪我をした場合でも出血が止まるようになりました。
健常児である長男との関係性は?
次男が生まれたのは長男が2歳の時だったので、当然その当時はわかっていなかったですね。ただ、次男が病院に通っているのを見て、怪我をしやすいことは感じ取っていたようです。また、次男も話すようになってくると、「ぼくは注射するのにお兄ちゃんは注射しないの?」と聞くようになりました。
そこで、我が家では、「(次男・三男は)血を取ってくれるスーパーマンが体の中にいなくて、代わりにお薬で取ってもらうんだよ」と説明しています。今では長男も病気のことをわかるようになってきて、弟達が転んだら教えてくれるようになって助かっています。
学校へはどのように伝えていますか
保育園の先生には血友病であることを正直に伝えています。具体的に気をつけてほしいことや、転んだりぶつけたりして対応に困るようなことがあったら電話してくださいと伝えています。
保育園のお友達のお母さん達にも、息子が「血が止まりにくい病気」ということをオープンにしています。変に隠したり意識したりしないで、最初にこちらからきちんと話をすることによって、みなさんすごく親身になって理解してくれると感じています。小学校に上がっても同じようにオープンに伝えていく予定です。
困った時は誰に相談していますか
その時によっていろいろですね。長年お世話になっている病院の看護師であることもありますし、相談の手前で自分の中で整理できてしまうこともあります。医学的な問題や、専門的なことなどに関しては、病院に行った際に主治医の先生に聞いて解消しています。悩みを抱えて一人で悶々としてしまうことはないですね。
先々のことで気になっていることはありますか
今はまだ子ども達が小さく、目の前のことでいっぱいいっぱいなので、逆に不安になるようなことはあまりありませんが、大きくなるにつれて体育の時はどうするのか、スポーツをやりたいと言われた時にどうするのかなど、小学校に入ってからの生活のことが気になります。
また、これはまだずっと先の話ですが、将来子ども達が結婚をして家族を持ちたいと思った時に、生まれてくる子どもが女の子の場合、血友病保因者になるので、その時の医療がどうなっているのか気になりますね。今よりももっとよいサポートがあるといいなと思っています。
医療にしても、ヘムライブラのおかげでかなり状況はよくなりましたが、さらに優れた医療が登場することを願っています。製薬の技術やサポート体制などが、子ども達が大きくなるまでにさらに向上していれば嬉しいですね。