血友病とは?
一覧はこちら人工関節置換術を受けた血友病患者の体験談
はばたき福祉事業団では血友病HIV感染被害者の「長期療養と加齢」シリーズ13として、長期療養のためのオンラインイベント「今後気になる関節症」を10月29日(土)に開催しました。今回は前半に3つの講演を行いました。竹谷英之先生からは「関節手術」、小林瑞季先生からは「手術と止血管理」、小久江萌先生、能智悠史先生からは「術前・術後のリハビリ」についてお話していただきました。後半は、藤谷順子先生をファシリテーターに迎えて、関節手術を実際に行った2名の患者さんの体験談を伺いました。
<インタビュー>
―血友病患者で人工関節置換術を受けたことのあるTさんとHさんに、手術時のことや術後の経過、毎日の生活で感じることなどをお伺いしたいと思います。まず、お二人の手術経歴を教えてください。
Tさん:私は15年前に右股関節、8〜9年前に左股関節、そして今年(2022年)5月に左膝を手術しました。全てに術後は良好です。
Hさん:私は16〜17年前に左膝を手術しました。その当時は40台前半だったので、手術をするにはまだ早いかなと思ったのですが、術後も良好なので思いきってやってよかったです。
―Tさんは手術歴が複数回ありますが、手術時の様子について昔と今とでは違いはありますか?
Tさん:15年前の右股関節の手術の時は、まだ人工股関節の手術が今ほど普及していなかったので、何よりも感染症の心配から厳重な感染症対策のもと保護しながら手術をした記憶があります。しかし、実際には心配するようなことも起きず、問題なく手術を終えることができました。今年の手術に関しては、15年前よりも手術の技術が進んだからか、あっさりと終わったような印象でした。
―Hさんの手術時は、どのようでしたか?
Hさん:手術は全身麻酔で行われたので、正直何も覚えてないですね。気づいたら終わっていたという感じです。術後は「私の膝、曲がっていますか?」と何度も確認しました。手術をして可動域が変わることが自分にとっては一番の懸念事項でした。
―手術前と今とでは、可動域に違いはありますか?
Tさん:リハビリをだいぶ頑張ったので、術前と同じ程度には戻ったと思います。伸びはよくなりましたが、曲がりはまだ完全には戻っていないですね。
Hさん:手術前と後では、可動域はあまり変わっていないです。ただ、手術する前は曲げることが痛かったので膝を固めて歩いていましたが、今は痛さがなくなったので気にしないで歩くことができるようになりました。
―Tさんは手術した関節を意識することなく生活できていますか?
Tさん:日常的な動作に関しては意識していないで動くことができていると思います。ただ、曲がりに関しては、まだ自分の可動域がいまいちわからないので、「どこまで曲げていのかな?」と不安に思いつついつも曲げています。
―Hさんは手術前後で生活に変化はありました?
Hさん:手術する前は1時間外出しただけでもクタクタになっていましたが、いまはどこまでも散歩に行くことができますし、調子が良いと「遠くの公園まで歩いて行こうかな」と思えるまでになりました。暮らし方が全く変わりましたね。手術をして本当によかったと思っています。
―Tさんは、手術の前に心配だったことはありますか?
Tさん:手術前のお医者様からの説明では、感染症の可能性についてさんざん話されました。「失敗したら歩けなくなるよ」と言われ、さすがに心配にはなりました。しかし、それも杞憂で、結果的には手術は成功しましたし、長年の悩みだった痛みもなくなったので、こんなに楽になるものかと実感しました。
予想外だったこともあります。自分は股関節の具合が悪かった時は松葉杖を使っていたので、足関節にほとんど負担がかからなかったのですが、股関節と膝の具合がよくなったら足首に負担がかるようになり、足関節が逆に痛むようになりました。
―Hさんは手術後いかがですか?
Tさんと同じく、体重のかかり方が変わったからか反対側の足関節が痛くなりました。手術した膝の反対側の足関節です。足関節も人工関節もあると聞いたことがあるので、個人的には興味を持っています。
― 手術をしていない方の関節と比べて、手術をした関節に違和感はありますか?
Tさん:今までは出血(関節内出血)してくると、「出血しているな」と自覚があったのですが、手術をしたことによって、出血が起きた時におそらく出血しているかどうかがわからなくなるのではないかと思います。まだ手術をしてからの出血は経験ないですが、人工関節にしたところの感覚の変化がどのように影響するかは未知数ですね。
―Hさんは術後にトラブルなど経験されたことはありますか?
Hさん:旅行で地方に行ったときの話です。バスで2人がけのシートに座ろうとした際に、狭い隙間に体を入れて無理な体勢をとったからか足をひねってしまって倒れてしまいました。痛みは全くないのですが動けなくなってしまって、そのままタクシーで病院に行き即入院となってしまいました。一晩で退院できましたが初めてのことだったので自分でもびっくりした記憶があります。
―Tさんは動作などでトラブルや心配なことなどありますか?
Tさん:私の場合はいつも通りに生活できています。特に制約が増えたこともないですね。階段の昇り降りの時以外は日常的に杖や手すりも使っていません。
―Hさんは先ほどの旅行先での一件以外、何か変わったことはありますか?
Hさん:バスや飛行機などは座席の前後の間隔が広くないと厳しいですね。しかし、自転車に関してはペダルを特別な仕様にしてもらって乗っています。
―手術についてお伺いしたいと思います。入院期間はどれくらいでした?入院で何か困ったことなどありました?
Tさん:入院期間は1か月間くらいでした。入院で困ったことは特にないですね。
Hさん:私の場合、入院期間はもっと長かったですね。仕事の心配もあったので、いつ退院できるのか見通しが立たなかったことが自分にとっては問題でした。今思うと恥ずかしい限りですが、「早く退院させてください」とお願いをして、早く退院させてもらいました。
お仕事や介護などをされている方にとっては、手術の予定日をいつにするべきかという問題はあるかと思います。
―最後に、手術を悩んでいる方に向けて伝えたいことなどはありますか?
Tさん:人工関節置換術を受けたことにより、長年悩まされていた痛みが取れました。動きも楽になったので、手術をして本当によかったと思っています。筋肉が衰える前にやるといいと思います。
Hさん:私も痛みが一番の悩みだったので、痛みがなくなって本当によかったと思っています。
―貴重なお話ありがとうございました。