血友病とは?
一覧はこちら保因者は誰に相談すればいい?血友病患者を多く診療している医師に話を聞いてみました
血友病患者を支援するはばたき福祉事業団です。
今回は血友病保因者のケアについて考えてみたいと思います。
というのも、血友病患者には主治医がおり、日常的に医療を受けることができていますが、血友病保因者はそもそも血友病患者ではないので通院することもなく、相談できる主治医がいないことがあります。
しかし、血友病保因者が何かけがをしたとき、手術が必要なとき、出産するときには、治療において注意すべき点や特別な配慮が必要になってきます。そのようなときに保因者女性はどこに相談したらよいのでしょうか。
そこで、血友病保因者のケアについて経験のある血友病患者の診療をしている
エイズ治療・研究開発センターにおいて医療情報室長・救済医療室長を務められる田沼先生にお話を伺いました。
ー血友病の保因者の方のケアをされることはありますか
私の勤めるエイズ治療・研究開発センターはHIVに感染した血友病患者専門の医療機関なのですが、そのご家族のご相談にのることはあります。
先日相談を受けたのは血友病患者の娘さんで確定保因者の方でした。
ーどのような相談でしたか
その娘さんが手術を受けることになったそうで、手術を受けるにあたって心配だとお父さんから相談を受けました。
どうやら手術を受ける医療機関の主治医に対して、娘さんは自分自身が保因者であることを話していないようでした。
ー手術する際は保因者も気を付けないといけないのですか?
分類として保因者であるだけで、実際には軽症の血友病と同じぐらい凝固因子活性が低い人もいます。そのような方に関しては、血液製剤を使った方がいい場合もあるので気を付けないといけないですし、自分自身の症状のことは主治医に伝えるべきだと考えています。
実際その方が受ける手術はかなり大きなものだったのでなおさらでした。しかしながら、保因者の症状というのは言葉で説明するのが難しく、いざとなったら医者にどのように伝えればいいのか悩まれる方もいらっしゃいます。
ー自分で説明するのは難しいかもしれませんね
そうですね。伝え方の問題もありますし、相談する医者の血友病に対する知識によっては、「そんなリスクのある方は手術できません」と言われてしまう可能性もあります。そこで私たちは、「医者に話してくださいね」で終えるのではなく、解決策まで一緒に練って、どのように伝えたらスムーズに事が運ぶかまでを考えて、伝え方までを提案しました。
ーどういった流れで伝えたのですか?
実はその娘さんにはお子さんがいたのですが、その子も血友病で病院に通院していました。
そこで、まずは血友病の知識がある息子さんのかかりつけ医にお母さんも患者さんとして受診してケアを受けることを勧めました。
そして、そこで手術が必要な旨を伝え、その病院経由で手術を行う主治医に保因者である旨や必要な対策を伝えてもらったのです。
息子さんのかかりつけ医は血友病の専門医なわけですから、手術を行う医者にも分かりやすく状況を伝えることができ、スムーズにコミュニケーションがとれます
実際は各医療機関に存在する医療連携室を通じて医者同士が文書としてやりとりしていきます。もし仮に手術を担当する医者が、血友病保因者の手術は出来ない・血液製剤を用意できないと言った場合に備えて、我々の医療機関で同じような手術できるように手配はしておきました。
ーそこまでされるのですね
そこまでするのが我々のモットーです。
保因者のケアのポイントは2点あります。
1、医療機関・医者との繋がりをつくる
何かあったときに医療と繋がっておくことや専門の先生を持っておくことは大事です。
血友病に詳しい先生は全国にいるので、ご自宅の近くでそのような先生を見つけて、相談できる関係をつくっておくとよいでしょう。
保因者で自覚症状がないから受診できないということはありません。血友病の方がご家族にいれば診断を受けられるのです。
2、上手くコミュニケーションが図れるようにサポートする
保因者自身に医学的知識がないとコミュニケーションが有効に働かず、伝えたい意図が伝わらないことがあります。私たちは「だれにどのように話すか」を、より具体的にアドバイスすることで保因者の方が迷わず動くことができる環境をつくるようにしています。
コミュニケーションのひずみが生まれると、トラブルを起こしかねないので、物事を伝える順序、伝え方はとても重要です。
これらを私たち医療従事者が理解して患者さんに臨めば、保因者の方が安心して相談できる環境や、生きていく土壌ができるのではないでしょうか。
ーありがとうございました
保因者の方に限らず、大事なことはコミュニケーションの質を高く保つことでしたね。
「誰に何を話すべきか」
これまで医療機関や血友病の方との繋がりがないという方は、是非一度ははばたきにご相談ください。