血友病とは?
一覧はこちら5分で読める 血友病の保因者に関する基礎知識
インターネットで「血友病」を検索すれば多くの情報を得ることができますが、「血友病の保因者」に関する情報やサポート体制はまだ十分とは言えません。
本記事では、血友病および保因者女性に関して、正確かつ平易な情報をまとめています。
「どこに相談すればいいか分からない」「自分の状況を正しく理解したい」と感じている方の参考になれば幸いです。
1. 血友病とはどういう病気か?
血友病とは、生まれつき血液を固める働きを担うタンパク質(血液凝固因子)の一部が不足しており、出血時に血が止まりにくくなる病気です。
血液凝固に関係する複数の因子のうち、第VIII因子が不足しているタイプを「血友病A」、第IX因子が欠乏しているタイプを「血友病B」と呼びます。
血友病はX染色体に関係する遺伝子異常によって発症するため、発症は男性に多く見られます(ごくまれに女性が発症する例もあります)。
2. 日本の血友病患者数
厚生労働省による「令和 6 年度血液凝固異常症全国調査」では、国内の血友病患者数はおよそ7,300人と報告されています。
– 血友病A:5,956人(約81%)
– 血友病B:1,345人(約19%)
3. 血友病の症状にはどんなものがあるか
血友病の患者さんは、外傷だけでなく、打ち身、関節、筋肉、脳など、目に見えにくい部分での出血にも注意が必要です。
【内部で起きる出血】
– 筋肉内出血:腫れや痛みが続く
– 関節内出血:膝・足・肘などが腫れて痛む
– 頭蓋内出血・脳出血:重篤なケースでは命に関わることも
【目に見える出血】
– あざ、血腫
– 鼻血、口腔内からの出血など
【特に注意が必要な出血】
– 頭蓋内出血、消化管出血、腸腰筋出血は生命や後遺症に関わる重大な出血として注意が必要です。
4. 血友病の保因者とは?
血友病の遺伝子異常を保有している女性は「血友病の保因者」と呼ばれます。
女性にはX染色体が2本ありますが、そのうちの1本に血友病の原因となる遺伝子変異を持っている場合、保因者となります。
たとえば、血友病の父親と、血友病ではない母親の間に生まれた娘は、父親から異常なX染色体を受け継ぐため、保因者になります。ただし、もう一方のX染色体が正常であれば、一般的には発症には至りません。
5. 保因者女性が注意すべきこと
出血傾向がある保因者女性もいます
従来、保因者の女性には出血症状が見られないと考えられていましたが、2012年の世界血友病連盟(WFH)による調査では、保因者の約3分の1で凝固因子活性が60%未満であると報告されています。
出血傾向のある保因者女性は、月経過多、内出血、止血が遅いなどの症状に悩まされる場合がありますが、それを血友病と結びつけずに見過ごされることも多いのが実情です。
保因者女性の声:
「自分自身の成長の過程の中で、今になって思うと『血友病保因者だったからかもしれない』と思うことがいくつかあります。
例えば生理がそうでした。10代、20代の頃は出血量が非常に多く、生理用品も頻繁に替える必要があり、日常生活にかなり支障がありました。
自転車に乗るのも不安で、長距離の移動などは無理だと感じることがよくありました。
でも当時は“みんなそうなんだろう”と思っていて、自分が保因者であることとは結びつけていませんでした。」
妊娠・出産の際も事前準備が必要です
保因者女性の中には、凝固因子活性が40%未満という低い値を示す方もおり、出産時に輸血や製剤の投与が必要になる場合があります。
また、赤ちゃんが男の子であった場合、血友病を発症している可能性もあるため、分娩方法にも注意が必要です。吸引分娩や鉗子分娩は避け、帝王切開を推奨する医療機関もあります。
血友病の診療に対応している「ブロック拠点病院」や、その連携施設である中核病院の産科を選ぶことで、安全性が高まります。
保因者女性の声:
「近くの病院では『対応できない』と言われたため、以前お世話になった病院で出産しました。
保因者であることはあらかじめ伝えていたのに、出産時の出血が激しく、産後1週間はまともに起き上がることもできませんでした。
退院時に『保因者は出血が多いんですよね』と医師に言われ、“今さら何を言っているのか”と感じました。
結果的には問題がなかったからよかったですが、事前にしっかり対応してくれると思っていたので驚きました。」
6. 保因者女性が相談できる場所は?
症状以外にも悩みがあります
保因者女性が抱える悩みは、出血症状や出産だけではありません。
たとえば、結婚を考える相手にどう伝えるか、遺伝のリスクをどう説明するかなど、心理的な悩みや社会的な課題も大きな問題となります。
過去には、血友病に対する誤解から家族の反対を受け、結婚を諦めたという声もあります。
保因者女性の声:
「昔、結婚を考えていた相手がいましたが、ご両親の強い反対を受けて受け入れてもらえませんでした。
でも今の夫は、血友病や遺伝のことも含めてすんなり理解してくれました。」
必要な支援や相談窓口を活用しましょう
私たち「ばたき福祉事業団」では、血友病の患者さんだけでなく、保因者女性からのご相談も受け付けています。
血友病に詳しい医師や、遺伝カウンセラーのご紹介も可能です。
また、血友病について分かりやすくまとめた「血友病FACTシート」も配布しています。
結婚、妊娠、出産などのライフイベントで不安がある方、ご家族への説明に悩まれている方は、どうぞご遠慮なくご相談ください。