血友病とは?
一覧はこちら健常者の長男、血友病の次男・三男を育てる中で得た気づき。乳児期・幼児期に気をつけたいケガや事故とは
前回に続き、ご自身が血友病保因者で3人の男の子のお子さんを育てている広川さんにインタビューを行いました。3人のお子さんのうち長男は健常者、次男と三男は血友病です。
今回は、血友病のお子さんの子育てについて、苦労していることや工夫していることを伺いました。
―健常児である長男のお子さんも検査をしたことがありますか?
長男は検査していません。総合病院で出産したのですが、出産の際には血友病の家系であることと、生まれてくる子どももその可能性はあると伝えました。先生も血友病の知識がないわけではなかったので、出産には細心の注意をはらった上で、もし生まれてきた赤ちゃんに血友病の症状があらわれたら検査しましょうという対応でした。しかし、症状が全くなかったのでそのまま検査をせずに今に至ります。
次男・三男は病院を変えての出産だったのですが、その病院では血友病の可能性のある子が生まれますと新生児科に連絡がいっていたので、1か月で検査をしましょうということになりました。そして検査の結果、血友病とわかったのです。
―お子さんが血友病と診断されるまで気をつけていたことはありますか
次男と三男が生まれた後、血友病でないといいなと思いながら子育てをしていましたが、次男は生後0か月の時に、そして三男は生後1か月の時に検査をして血友病だということがわかりました。
血友病だと診断されるまでの間に気をつけていたこととしては、次男が生まれたとき長男が2〜3歳だったので、長男が誤っておもちゃなどを次男にぶつけないように気をつけていました。生後間もなくの赤ちゃんは自分から動いてケガするわけではないので、次男の動きに関しては特に気をつけずに普通に子育てをしていました。
―血友病の子どもが生まれる可能性を意識して、心がけていたことはありますか
私の場合は家族歴で血友病の子が生まれる可能性があることを知っていたので、生まれる前から通える病院を探していました。しかし、現在、身内に血友病患者がいるわけでもなく、そして予備知識もなく生まれた子が血友病だった場合は、病院探しから始めることになります。住んでいる場所によっては血友病患者の受け入れ体制が整っている病院が遠いこともあるので大変かと思います。
実際には通院と言っても月1回か、2週間に1回程度ですが、何かあったときに急に行かなくてはならないことを考えると、家の近くに病院があるといいですよね。
―赤ちゃんのときに気を付けていたことは?
とにかく硬いものにぶつけたりしないように気をつけていました。
ベッドの柵のところにクッションを敷いたり、床にジョイントマットを敷き詰めたりして工夫していました。動き始めるようになると、やわらかいヘルメットのようなものを被らせてました。また、転んでもいいように背中にクッションが入っているリュックを背負わせたり、車に乗せるときはホールドのしっかりしたチャイルドシートを使ったりしていました。
ヘルメットやリュック型クッションでケガのリスクを防ぐ
ひじあて、膝あても必需品です
―子育てにあたって先生からアドバイスはありましたか
先ほど申し上げたジョイントマットに関しては病院で教えてもらいました。そのほかには、
階段がある場合は登れないように柵をつけることや、玄関に段差がある場合は下にマットを敷くか、ベビーゲートを付けることも教えてもらいました。角のある家具にクッション材を張ることも教えてもらいましたね。血友病かどうかは関係なく、赤ちゃんがいるご家庭でもやられていることと共通していると思います。
―血友病の赤ちゃんを育てるうえで大変だったところは?
赤ちゃんは何かがあっても自分から訴えたり説明したりすることができないので、親が注意して見ておく必要があります。ぶつけたかもしれないと思うようなときは腫れていないかいつもチェックしていました。
うちの場合は赤ちゃんの時はヘムライブラ(出血を止める血友病の治療薬)を使用していなかったので、ぶつけたときに気付くのが遅いと大きなあざができていました。赤ちゃんの動きは予測不能なこともあるので、目を離さないように気にしていました。
―ひやっとしたことは?
つかまり立ちをするような時期につかまりそこなって、顔がテーブルにぶつかって口の中が切れて血が止まらなかったということはあります。後ろ向きに倒れることもありました。そのようなこともあって、とにかく息子の周りを授乳枕や毛布などやわらかいもので囲んでいました。膝当ても赤ちゃんの頃から使っていました。
やわらかいものを敷き詰めている様子
また、私の家族の話ではないのですが、ある血友病のお子さんは4ヶ月の時に突然脳出血のような症状が出たと聞いたことがあります。気付いたのが早かったので大事には至らなかったそうですが、対応が遅くなると障害が残る可能性もあるので、常に目を配っている必要がありますよね。
―日常生活でも出血するようなことはありますか?
転んで擦りむいて……というようなことではなくても、ハイハイであざができたり、尻もちをついてあざができたりすることは普通にありますね。出血するほどのケガという意味では、舌を噛んでしまった時になかなか血が止まらなかったので、病院に電話をして注射して止血したこともありました。口を切った場合は、一度止まってもご飯を食べた時にまた出血してしまうことがありますが、注射をするとそのようなことはないので効果があると思います。鼻血が止まらなくて病院に行ったこともありました。何かあった時に駆け込めるという意味では、病院の近さは重要ですね。
―成長された最近ではどうですか?
4歳になる次男に関しては、3歳頃から本人がぶつけたところを言えるようになったので、
乳児期に比べるとケガを把握しやすくなってきました。しかし、動けるようになってくると遊び方も激しくなってくるので、公園の遊具で頭をぶつけたり、三輪車で転んだりするようなことはありますね。幼稚園に通っていますが、園ではクッション材が入った帽子をかぶるようにしています。
今はヘムライブラを注射しているので、擦り傷程度でしたら健常児と変わらない症状で済みますが、頭をぶつけるようなことがあったら病院で受診するようにしています。
―次男の子育てと三男の子育てでは、心の余裕に違いはありますか?
次男よりも三男の方が発達が早く、寝返りやハイハイが早くて大変でした。次男の方が落ちついて子育てできていましたね。
―出血傾向の違いは
血液データはほぼ同じです。血友病としての症状は変わりないですね。ただ、2人はタイプが違って次男は体を動かすのが好きなので注意が必要ですが、三男は比較的おとなしいタイプなので、そのような個人差はあります。
―これからさらに成長するにつれて心配なことはありますか?
乳歯が抜けたときの出血は心配です。インスタグラムでうちより大きいお子さんを持つお母さんの投稿を見たのですが、歯がぐらついてきたころから歯医者さんに通い、抜く前と後で注射を打ったと書いてありました。歯科に関する情報があるとありがたいですね。
―はばたきに寄せられた『内出血であざが数か所にあると虐待をしているのではと思われないか心配です』という話がありました。あざが全身にできていたりすると世間の目は気になりますか?
私はオープンに血友病のことを話している方なので、周りはみんなうちの子どもはあざができやすいと知っているのであまり気にしていませんが、周りに話していない方だと気になるかもしれないですね。必要以上にオープンにすることはないと思いますが、ご自身のお子さんが血友病ということは、身近な人にはきちんと伝えておいた方がいいと思います。周囲の理解や協力は心の支えにもなるので。
―今日は貴重なお話ありがとうございました。
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