血友病とは?
一覧はこちら「心が軽くなり、行動範囲が広がった」〜人工関節置換術を受けた血友病患者の体験談
血友病患者と血友病保因者を支援するはばたき福祉事業団です。
今回は、関節の痛みを抱えている血友病患者にとって治療の選択肢の一つとなる「人工関節置換手術」について、体験者のお話をもとにご紹介していきたいと思います。
手術に踏み切ったきっかけや手術後の生活の変化などのほかに、手術やリハビリの様子など、今後手術を考えられている方にとって役に立つ具体的な情報もお伝えします。ぜひ最後までお読みください。
-手術を受けられたのはいつですか?また、手術受けようと思ったきっかけについても教えて下さい。
左股関節の置換手術を受けたのは2023年の4月です。半年前になりますね。
手術を受けようと思ったのは、何か特別なきっかけがあったわけではなく、それこそ機が熟したと申しますか、手術を避けては通れないほど症状が悪化してしまったからです。痛みが限界に達していましたね。自分でも「どうしてあそこまで我慢してしまったのだろう」と今でも思います。
-手術を受けられる前は、どのような生活をしていましたか?
自分は今50代ですが、40代半ばを過ぎた頃から関節の痛みを感じるようになり、だましだまし生活をしていました。最初はそこまでではなかったのですが、昨年の6月ごろからだんだんと痛みが強くなってきまして、動かさないでじっとしていても、それこそ寝ていても痛みを感じるようになってきました。
血液製剤投与は家庭療法(自己注射)週一回、定期補充していますが、痛みには全く効かないですね。痛みはどんどん増していき、家の中を移動するのも車椅子のような状態でした。さすがにそれはまずいと思い、昨年の12月に自分から手術の申し出の電話をかけました。
-手術を受ける病院については、どのように決めましたか?
自分には血友病のかかりつけ医として地元医療機関のA先生がいたのですが、A先生は血液の専門なので人工関節置換手術はできません。そこで、過去に一度だけお世話になったことのある県外の医療機関のB先生にお願いしようと、突発的に電話をかけてしまいました。あの時の自分は本当に切羽詰まっていたのだと思います。
実は手術に関しては、これまでもA先生から何回か勧められていまして、そのたびに「自分にはまだ必要ない」と断り続けていたのです。純粋に手術に対する怖さから逃げていただけなのですが、いよいよ痛さがピークになり、身をもって手術の必然性を感じて連絡したわけです。
手術に先立って12月にB先生に診てもらったのですが、なんとB先生は翌3月に退職するとのこと。手術の予定が4月だったので、B先生に執刀してもらうことができないとわかりました。しかし、さすがに無理も言えないので、B先生が太鼓判を押すC先生という方に手術をしてもらうことになりました。そんなこんなでバタバタと手術する運びとなりました。
-手術前に特に心配だったことはありますか?
ひと昔前は感染症の心配をする方が多かったようですが、今は感染症リスクはかなり軽減されているようなので、そこはそれほど気にならなかったです。
自分の場合は手術そのものに対する不安がありました。やはり自分の体にメスを入れて、体の一部を入れ替えるわけですから、よくよく考えるとすごいことですよね。
しかし、自分のまわりにも人工関節置換手術を受けた人が実は数名おりまして、彼らからポジティブな話しか聞いてなかったので、そこまで心配することもないのかなと思いました。
-実際の手術はどのようなものでした?
4月初めから検査入院をして、手術をしたのは4月上旬です。術後3週間ほどリハビリをして退院したのは5月上旬でした。病院には約1ヶ月いたことになりますね。
手術当日は、これも運命と申しましょうか、たまたまB先生が月に一回出勤する日だったようで私の手術に立ち会ってくれました。本当にありがたい話ですよね。また、手術そのものは整形外科の専門ですが、私が血友病の患者ということで手術時には血液内科の先生も待機してくれて万全の体制でやってもらいました。
術後は順調に回復していきまして、最初は股があまり広がらなかったのですが、リハビリをしていく中で可動域もどんどん広がり、退院するころには日常的な動作はほとんど何の支障もなくできるようになりました。病院の先生も「3週間で退院するのは早い方だ」とおっしゃっていました。
入院するときは松葉杖をついていたのですが、退院するときは抱えて帰りましたよ(笑)
-手術後の違和感などは?痛みなどは?
痛みに関しては全くありません。あれほど痛かった股関節の痛みが嘘のようになくなったので、手術の効果はすごいと思います。
ただ、違和感はあります。太ももから膝にかけてのつっぱり感のようなものがありますね。しかし、まだ術後半年なので、これも徐々になくなっていくのかもしれません。何れにせよ、違和感は生活に支障をきたすようなものではないので、特に気にしていませんが。
-手術前と手術後で一番変化したことは何ですか?
気持ちが変わり、行動範囲が広がりました。それはもう劇的な変化です。
我ながらここまで変わるのかと思いましたね。
退院してから、その10日後には家族みんなで富士山に行きました。もちろん最初から登ったわけではなく、5号目までは車で行って、そこから軽く散策しただけなのですが、歩くことすらままならなかったことを考えるとものすごい変化ですよね。よほど気持ちが晴れ晴れしたのだと思います。
毎日の生活も変わりました。買い物も自分の足で行けますし、家の中でもトイレやお風呂にもパッと行くことができます。当たり前と思うかもしれませんが、当たり前のことが今までできなかったので、もう本当に生まれ変わったみたいですよ。
友人からも「明るくなった」と言われたので、表情も変わったのかもしれませんね。今となっては手術前の生活が考えられないです。
-手術をして一番良かったことは?
一番は痛みが取れたことです。それまではとにかく何をするにも痛くて痛くて……痛みと共存して生活していました。最後の方はあまりにも痛くて何もできないのですから。
しかし、いつかは手術と思って先延ばしにしていると、あっという間に3年、5年と時間が経ってしまいますが、その時間は本当に無駄です。今、人工関節は20年持つと言われているので、痛みに耐えながら生活するよりは早く手術をして20年楽に過ごした方がいいですよね。その方が人生明るくなりますから。
-手術を悩んでいる方にメッセージを!
自分は早く手術に踏み切らなかったために、何年も痛みに耐えて生活していました。まともに歩くこともできず、行動範囲もどんどん狭まって、本当にもったいない時間だったと思います。しかし、手術をしたことにより劇的に人生が変わりました。
これまで行きたかったところ、やりたかったこと、今は全てに対して何の抵抗もなくチャレンジできます。毎日が楽しくて仕方がありません。気持ちも明るくなったので、一緒に過ごしている人にとっても嬉しいのではないでしょうか。
もし、今手術を考えている方がいらっしゃるのであれば、心から手術をすることをお勧めします。手術を怖いと思う気持ちがあるのもわかりますが、実際に経験してみるとほとんどが杞憂だったことがわかります。何年も我慢して自分のように症状が悪化してしまうより、早く決断された方が、その後の生活が明るくなりますよ。