研究のご紹介
一覧はこちら【血友病の研究紹介】奈良県立医科大学小児科 野上恵嗣教授
研究者としての経歴
ー野上教授の研究者としての経歴を教えてください
私は奈良県出身で1991年に自治医科大学を卒業しました。その後奈良県に戻り、9年間は臨床及び地域医療に従事し、その後救命センターで3次ER(3次救急)に携わり、その後海外での研究生活を経て、現在の奈良県立医科大学の小児科に戻ってきて約20年が経過したところです。今は臨床及び研究を行っています。
血友病に関わったきっかけ
ー血友病医療に関わったきっかけを教えてください
奈良県に戻って奈良県立医科大学小児科に入局しました。奈良県立医科大学小児科は血友病医療含め、血栓止血と治療の日本の中心的な施設だったのですが、そこで元教授である吉岡章先生の診察の陪席として勉強させていただき、血友病の診療及び医療に興味を持ったということが私の研究の始まりになります。
これまでの研究について
ーこれまでの研究内容について教えてください
最初は血友病Aの責任凝固因子である第VIII因子の基礎的な構造及び機能の解析について研究を始めました。第VIII因子は多くの凝固因子と密接に関係しながら凝固を促進させる性質を持っています。その中で、多くの凝固因子と結合する第VIII因子の中の結合部位の同定そして第VIII因子が活性化、不活化されていく過程について研究を続けています。
進めてきた研究とわかってきたこと
ー長年進めてきた研究でわかってきたことはどのようなことでしょうか?
第VIII因子の活性化そして不活化というのは、非常に複雑且つ繊細な機序で行われます。その中で、私自身第VIII因子のトロンビンによる活性化、第X因子による活性化、また活性化プロテインCによる不活化などの機序を解明しました。さらに、それらのデータを元に第VIII因子の製剤開発を目指して研究を進めてきました。
また、第VIII因子では血友病Aの患者さんでは2−3割の患者さんが同種抗体インヒビター出現という、臨床上非常に重要な課題に直面しています。そのインヒビターの発現機序について、第VIII因子をターゲットとしてその機序の解明を行ってきました。その中で特にインヒビターが作用する、あるいは作用しなくなる第VIII因子の製剤の開発も現在進めているところであります。
血友病の研究に対する今後の展望
ー血友病の研究に対する今後の展望についてお聞かせください
血友病Aの患者さんが非血友病の方と同等な生活ができるようになる、すなわち静脈内注射の回数を極力減らしていくことを目指しています。
今は皮下注射がかなりの方にも使用されていますが、皮下注射で使われる製剤の開発にも製薬会社と関わってきました。今はよりその薬を発展させた治療を開発しているところです。
最終的には患者さんが日常生活において何一つ困らないようになることが理想なので、究極は遺伝子治療及びゲノム編集ということになりますが、患者さんの治療を超えて生活の質もあげていくこと、CareからCureを目指して今最終的な方向に向かって研究を進めています。
CareからCureを目指す期間と目標
私も一員であるAMED(エイズ対策実用化研究事業)の大森先生の班で、遺伝子治療に搭載する画期的な高機能第VIII因子を共同開発することができました。それをベースにして遺伝子治療が進むのならば、CareからCureに近づくと思います。治療なしにしてもどのようにして第VIII因子遺伝子を正常の遺伝子に変えていくかという問題に関してはハードルは高いので、まだゴールまでは見えないのですが、これから先10年ぐらいまでを目安に研究を進めていけたらと思っています。