血友病とは?
一覧はこちら血友病患者でも保険に入れる?入るときの注意点は?
血友病について学び、未来の診療を一緒に考える情報サイト「みんなで考える血友病診療ネット」を運営する社会福祉法人はばたき福祉事業団です。
血友病患者にとって保険への加入は簡単な話ではありません。
まず、血友病であることによって加入できる保険は限られ、さらに加入の際の条件や保険料などが健常者とでは大きく異なる場合もあるので
中には加入を諦めてしまう方もいるのが現実です。
保険という専門分野ゆえに、十分な知識がないまま加入することは危険ですが、かと言って諦めてしまうことも残念な話です。
そこで今回は、ご自身が血友病患者であり、第一線で保険営業のお仕事をされている松田さんに「血友病患者の保険加入」についてお話を伺いました。
血友病患者でも保険に入れる?
ー松田さんは現役の保険の営業マンということで、専門的な話もいろいろとお聞きしたいと思います。今日はよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
ーまず、血友病患者の保険加入の現状として、松田さんの知る範囲で教えていただければと思います。
実にさまざまだと思います。そもそも血友病患者が保険に入る際の必要な情報が少なく、皆さん限られた選択肢の中で加入をしたり、あるいは諦めたりしているので、私としては歯痒い思いでいっぱいです。なんとかこの状況を変えたいと常々考えておりました。
ー具体的に血友病患者が保険加入を考えた際、皆さんどのようになさっているのですか?
大きく3つの行動パターンがあると思います。
まず、「諦め」
これは最初から加入を諦めてしまうパターンです。
「血友病だからそもそも保険加入は無理!」と自分で決めつけて、
調べることもせずに諦めている方もいらっしゃいます。
そして、「妥協」
こちらは、血友病などの疾患や持病のある方に向けた保険に加入するパターンです。
このような保険商品を”緩和型”というのですが、緩和型の保険商品は一般的に割高で、申込時の告知項目も細かいなどの側面があります。
緩和型の保険商品は各社から出ているので、専門的な知識がないと最適な商品を選ぶことは難しいと思います。
最後に、「虚偽の申告」
これが一番問題なのですが、自分が血友病であると申告せずに保険に加入してしまうパターンです。例え申告をしないで健常者と同じ条件で保険に加入したとしても、実際に病気や入院などで給付金が支払われる段階でわかってしまいます。
加入時に必要な情報を申告をしないことは「告知義務違反」となります。
発覚した場合は契約が解除されることがほとんどで、契約が解除された場合、保険金・給付金等は支払われません。
ただし、これは後述しますが、保険加入時に「申告の必要がないと思っている」、あるいは「申告の必要がないと保険会社の営業担当から言われた」ことにより、本人に「告知義務違反」の自覚がないまま加入してしまうケースもあるので注意が必要です。
血友病患者が加入できる保険
ー血友病でも加入できる保険にはどのようなものがありますか?
血友病患者が加入できる保険としては、以下の3つがあります。
・医療保険の「緩和型」
加入時の条件などが緩和された「緩和型」の医療保険に入ることができます。緩和型は保険料が割高で、保険金給付のハードルが高いことがほとんどです。しかし、実は緩和型にもさまざまな種類があり、中には比較的好条件で加入できる商品もあります。
・三大疾患保険
ガン・急性心筋梗塞・脳卒中を合わせて三大疾患と言い、これらに対する保険として三大疾患保険があります。
三大疾患と血友病の因果関係は認められていないので、血友病患者であっても健常者と同じ条件で三大疾患保険に加入することができます。
・死亡保険
血友病患者が加入できる死亡保険は限られます。実際にいくつかの保険会社からは血友病患者が加入できる死亡保険を出していますが、加入時にこれまでの入院歴や手術歴などを細かく申告する必要があり、場合によっては加入ができないこともあります
そして、これらの保険に加入する際には専門的な知識がないと各社が出している保険商品を比較することができず、自分に合わない商品を選んでしまう可能性があります。
保険商品に加入する際には、曖昧なことを曖昧なままにせず、保険会社の営業担当や外部の専門家に内容を詳しく聞くなどして、よく吟味してから加入することをおすすめします。
保険加入時に注意すること
ー保険加入時に特に気をつけたいことはありますか?
先ほど申し上げたように、絶対に避けたいのは「虚偽の申告」による加入です。
虚偽の申告は、契約者である血友病患者の認識不足で行われる場合と、保険会社の営業担当のすすめで行われることがあるので注意が必要です。
特に営業担当のすすめで血友病であることを申告しないのは、加入者の「告知義務違反」であると同時に営業担当の「告知妨害」となります。
本当は告知しなければならないところを「告知の必要はありません」と言われたのであれば、本人は告知をしないことを問題とも思っていなかったことになります。それが給付金が降りる段階で「告知義務違反」となるのは、なんとも不本意なことです。
私が保険のプロとしてここで申し上げたいのは、原則として”保険加入の際に血友病であることは伝えるべき項目である”ということです。もしこの先保険に加入することがあったら、血友病であることをしっかりと申告しましょう。
保因者でも入れる?
ー保因者の女性でも保険に加入することはできますか?
血友病保因者の女性は、健常者と同じ条件で保険に入ることができます。
保因者は血友病患者でないので、保因者であることは告知すべき項目ではなく、また疾患という扱いにもなりません。
(注:保因者の中で凝固因子活性が低いため、女性血友病と診断されている方は除く。)
保因者の中には出血傾向がある方もいらっしゃいますが、保因者の中での区別はないので、保因者で出血傾向がある方でも問題なく保険に加入することができます。
住宅ローンと保険の関係
ー住宅ローンについても難しいと聞いたことがあるのですが
血友病患者にとって、住宅ローンを組むこともハードルが高いです。
一般的に住宅ローンを組む際には、団体信用生命保険(団信)という、住宅ローンの残高を保障する保険に入る必要があるからです。団信は万が一のことがあったときに、生命保険会社が銀行に保険金を支払い、住宅ローンの返済に充てるものですが、血友病患者は生命保険(死亡保険)に入ることが難しいことから、住宅ローンも組めないということです。
しかし、住宅ローンの中には血友病であっても組むことができる商品もあります。一昔前であれば血友病患者が入ることができる生命保険(死亡保険)はありませんでしたが、最近では少しずつ加入できる保険が作られてきています。
保険を通して血友病患者の人生をサポート
ー血友病患者を取り巻く環境は以前よりも改善されてきていると思いますが、松田さんはどのように感じていますか?
血友病の治療という意味では格段に良くなってきていると思います。医療の進化により、血液製剤の適切な投与により血友病患者が健常者と遜色のない生活を送ることも可能でしょう。しかし、保険加入のように社会生活を送る上での重要事項についてはまだまだ整備の余地があるのではないでしょうか。
私は自分自身が血友病であり、仕事として保険営業をしているので、双方の知識を駆使して血友病患者の保険加入をお手伝いすることができます。
保険に加入することは任意ですが、保険に入っていたことによっていざと言う時の支出を抑えることができますし、また保険に入っていること自体が安心にも繋がります。
保険加入を検討されている血友病患者の方や、過去に入ろうと思ったけれど諦めてしまった方などは、お気軽にはばたきまでご連絡ください。