血友病Q&A
一覧はこちらQ&A第43回
血友病Aで、幼児期になると関節出血が始まり、頻繁に繰り返しました。現在70代です。現在でも大小の出血に頻繁に見舞われ、クロスエイトを一日2000単位定期投与しても足りず、追加補充もしばしば行っております。
今更ではありますが、アドベイトを勧められました。30年ほど前でしょうか、インヒビターを起こしやすいとか、戦々恐々しながら様子を伺ってきました。学術的には、有意な差は認められないということで決着したかと思いますが、今でも釈然としないでおりまして、30年前の悪夢が甦って、憂鬱な毎日を過ごしております。
現在アドベイトのインヒビターはどのような位置づけにあるのか、ご存じでしたら教えてください。有意差が無い場合も、どう解釈して良いか、ご回答くださった方の個人的見解等も含めて、お教え頂ければありがたいです。関連的に、知っておいたほうがよいことがありましたら、お教えいただければ幸いです。
血友病患者さんに凝固因子製剤を投与すると、これを異物と認識して、凝固因子を阻害する抗体が生じることがあります。
これがインヒビターです。インヒビターは重症血友病A患者さんの約25-30%、血友病B患者さんの5%未満に生じると考えられています。一般にインヒビターが生じやすいのは投与開始から25回目までが多いため、すでに定期補充療法が行われている成人の患者さんでインヒビターが生じることは稀です。質問者様が、これまで凝固因子製剤を繰り返し使用しており、現段階でインヒビターの発症がなければ、今後、インヒビター発生の危険性は低いと思います。
遺伝子組換え製剤と血漿由来製剤のインヒビター発症リスクを比較したいくつかのデータがありますが、
質問者様がご指摘されているように、あまり差がないというデータが多いと思います。
日常診療では、多くの医師は遺伝子組換え製剤にインヒビター発生が多いという認識はないと思います。
以前はインヒビターが生じた患者さんの止血療法は活性型第VII因子(7因子)を投与するバイパス療法が行われていました。
最近では、二重特異的抗体であるエミシズマブが使えるようになり、これはインヒビターが生じた血友病Aについては止血効果を発揮します。そのため、インヒビターのある血友病A患者さんの生活の質は極めてよくなっています。また、ごく最近はインヒビターのある血友病A、B患者さんにコンシズマブという新しい治療薬が承認されており、インヒビター患者さんについても、複数の治療選択肢が選べるようになっています。