血友病Q&A
一覧はこちらQ&A第1回
血友病は遺伝性疾患なので、遺伝子解析やゲノム編集などされるのは怖いと感じるのですが。
回答者:自治医科大学教授 大森司
血友病があるかどうかの診断は血液検査で行います。現段階で遺伝子の解析が診断に使われることはありません。また、血友病の治療が進歩しているため、他の命にかかわるような遺伝性疾患とは違って、遺伝子診断による出生前検査は行いません。ただし、兄弟に血友病がいる女性や、家族に血友病がいないにもかかわらず血友病のお子さんをもうけた母親は、凝固因子の遺伝子に変異があるかどうかわかりません(推定保因者といいます)。この場合は、生まれてくるお子さんが血友病の可能性があるかどうかで、出産に対する準備がちがってきます。保因者を診断するには、遺伝子診断が重要になる可能性があります。今の段階では、遺伝子解析による確実な保因者の診断ができませんが、今回の研究で、通常の遺伝子診断の有効性やその限界をあきらかにしたいと考えています。
ゲノム編集というと体の中の設計図である全身の遺伝情報を書き換えるようなイメージがあるかと思います。実際に、様々な動物で、受精卵でゲノム編集をおこなって、遺伝子を書き換えた動物や植物ができるようになっています。しかし、受精卵の段階で治療としてゲノム編集をおこなうことは倫理面、安全面を考慮するとできません。私達は、生まれて血友病の診断がついた後で、凝固因子をつくりだす肝臓の組織のみでゲノム編集で血友病を治すことを目標としています。