血友病Q&A
一覧はこちらQ&A第29回
会社から海外赴任の打診がありました。期間は3年程度、場所はアメリカ。赴任に関して、障壁になるものがあるか聞かれ、血友病で医療費がかかるため国の補助を受けていること、病院含め医療サポート体制の確保が必要なことを伝えてあります。医療関係さえクリアすれば、個人的には是非行きたいと思っているのですが、検討の余地があるか相談したいです。
長期に海外に出張や留学で滞在するときにはどのように医療を受けるかを事前に充分調べておく必要があります。状況によって対応が異なるので、個別に事前に情報を集めることが重要です。以下に一般的な考え方について簡単に記載します。
1)住民票と健康保険がどうなるかの確認:滞在期間により住民票が残せる場合と残せない場合があります。1年未満の海外滞在は日本に住民票を残すことが可能ですが、1年以上の滞在は転居届が必要で除票となります。転居届を出した場合、住民票がなくなるので国保の場合は国民健康保険が受けられません。そのために国民健康保険の方は海外の医療保険に加入する必要があります。企業などの社会保険の場合には、雇用主が国内企業の場合は社会保険が継続可能ですが、雇用主が海外法人となった場合には継続できない場合があります。いずれも勤務する企業に保険についての確認が必要です。ただ、社会保険が継続されても、勤務が数年となり転居届を出した場合は、住民票が残らないので、毎年更新する先天性血液凝固因子障害等治療研究事業(通称:マル血)は適応になりません(栃木県庁に問い合わせ済み)。
2)海外で国内の製剤や医薬品は確保できるかの確認:こちらも、会社での長期出張であれば、海外での医療保険が適応になるかどうかについて、渡航先に国内のように受診できる医療機関があるかどうかの確認をしてください。この場合、高血圧や糖尿病に加えて、凝固因子製剤の処方が可能なのかも確認が必要です。日本はオンライン診療が認められており、オンライン診療は海外居住者でも適応になることが記載されています。そのため、オンライン診療に対応している医療機関であれば、国内と同様に処方箋による製剤の処方が可能になります。ただし、滞在国によってはオンライン診療が認められない場合や海外からの医薬品の送付が制限されている場合があるため、こちらは滞在国の状況を確認・把握して、オンライン診療から製剤や常備薬を確保できるかどうかを確認する必要があります。長期の滞在でなければ、事前にある程度必要な製剤本数を自分で渡航時に持っていき、健康保険が継続されていれば、一時帰国時に受診をして、製剤を確保して自分で持っていく方が無難と思います。
3)海外で困った場合の対応の確認:こちらも、勤務先の企業から、海外医療機関の保険に加入することができるかどうかを確認する必要があります。緊急の受診で海外の医療保険に加入していないで全額を負担した場合は、国内の健康保険により海外医療費制度によって、後日の申請によって一部の医療費の払い戻しが受けられます。ただし、国内の保険診療として認められているもので、国内の基準に照らし合わせた金額となります。海外での医療保険に加入しない場合は、高額な医療費の出費を抑えるためにも出血時の凝固因子製剤は国内で準備して持っていったほうが無難でしょう。