研究のご紹介
一覧はこちら改変した『ゲノム編集のための最小のはさみ』
CRISPR-Casは、細菌内でゲノムDNAを切断する「はさみ」として機能することで、ファージなどの外来核酸に対する防御を担っています。CRISPR-Casはヒトなどの哺乳類細胞でもゲノム編集が可能であり、これを利用した遺伝性疾患のゲノム編集治療が注目されています。
これまでのCas9では分子のサイズが大きいため、単一のウイルスベクターへの搭載ができないという問題点がありました。近年発見されたAsCas12fは、Cas9の1/3以下の大きさですが、Cas9よりも活性が弱いため、ゲノム編集ツールとして使用するには制限がありました。
そこで、東京大学、京都府立医科大学、自治医科大学らの研究グループは、Deep mutational scanningを用いた変異体スクリーニングと得られた構造情報に基づいた合理的な小型ゲノム編集ツールAsCas12fの改変を行い、野生型と比べてはるかにゲノム編集活性の高い改変型AsCas12fを作製しました。
改変型AsCas12fは、容易にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに搭載できるため、様々な臨床応用が期待されます。実際に改変型AsCas12fを搭載したAAVベクターによって、血友病Bマウスの血中凝固因子活性が上昇しました。本研究成果は、ライフサイエンス分野で最高峰の学術雑誌であるCellに掲載されました。
〈DOI〉10.1016/j.cell.2023.08.031
〈URL〉https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.08.031