研究内容01
一覧はこちら患者支援からみた研究ニーズの抽出と研究成果の還元(01)
血友病治療は進歩しており、血友病患者を取り巻く環境にも大きな変化がみられます。過去を振り返ってみても家庭補充療法が可能になり患者の通院の負担が減りましたし、定期補充をすることで出血のリスクが減り日常生活が広がるなど患者やその家族のQOLも良くなってきています。この背景には患者のニーズを医療者(研究者)が把握して課題解決に取り組んできたことがあります。そうした取り組みが実を結び、患者や家族へ成果となって還元されました。
現在は更に長期作用型の製剤や遺伝子治療も進んできています。また『遺伝』や『保因』に関する課題など、患者や家族のニーズが研究につながり、研究成果として還元されてきています。こうした進歩の流れをこの研究班では構築していきたいと考えています。
患者・家族と科学者・研究者の橋渡し的な支援の重要性
血友病の問題は患者だけでなく、患者を取り巻く家族も含めた問題解決が必要です。これまでの支援や研究を行ってきたところ、患者や、特に家族が血友病治療などの情報が古いままであったり、薬害HIV被害の問題も重なったりしたことで、将来の展望(結婚や子どもをもつこと)に対してどうしたらいいのかと潜在的に問題をかかえていることがわかりました。血友病の治療はとても進み、その取り巻く環境がよくなっているもかかわらず情報が伝わっていないことで悩みをかかえている患者、家族が少なくありません。
この研究班では血友病根治を目指す治療に取組んでいます。また、保因や遺伝の診断など家族の問題にも取り組んでいます。このように多岐にわたる研究を行っている特徴を活かしてこの分担研究では患者・家族と科学者・研究者の「双方向性」の情報提供の仕組みを整え、「橋渡し」の支援を行っていきます。つまり、研究班の成果を患者・家族が知ることにより、より前向きな治療や将来のイメージがもてるようになる、一方、科学者・研究者は患者・家族の現状や問題の理解を深めることで研究の質の向上や新たな研究のニーズがでてくるということが期待されます。更に、市民講座を開催し、広く市民の血友病の理解を深めてもらい治療の進歩など啓発していくことも重要だと考えています。
研究班では血友病治療の更なる進歩や保因・遺伝による将来の展望(結婚や子どもをもつこと)にも世代を越えて安心して生活できることを目指します。
「対話」を通して、患者・家族、研究者、産業界、市民の理解を得た発展へ
これまで薬害HIV感染被害者、血友病患者・家族の健康と社会参加を継続的に支援してきました。患者の社会参加などの支援研究をする中で要因としてあがった『母子密着』を調べていくと、その根底で『保因と遺伝』の課題がありました。それらに関しては、患者とその家族間で共有できない、情報が更新されないなどの理由で、潜在的な問題となり誰にも相談できない状態でいる家族(血友病家系女性)が多いことが明らかになりました
直接、医療機関や患者会などにもアクセスできない人のためにWEBを使った情報提供やe-learningという支援を行い、医療機関での医療保険の適応外となる保因者や家族の身体的や精神的な相談につなげています。WEB支援から入りますが、多くは対面形式の相談を行いその悩みの必要に応じて、適した医療機関や患者会につなぐ橋渡しをしています。
これまでの支援経験や患者・家族支援の視点を大切にし、患者・家族の現状、必要としている新しい治療や検査のニーズを拾い出していきます。一方では科学者・研究者が取り組んでいる研究と成果、最新の血友病治療について情報提供をするという「双方向性」を実現していきます。
研究全体が「対話」を通して、患者・家族の理解と支持を得て、そして研究者、産業界、広くは市民などにも理解を得ながら発展していくことを目的としています。