研究内容01
一覧はこちら血友病の凝血学的、遺伝子学的診断法の確立(01)
何故この研究をするの?
血友病診断に至らない軽症患者や女性保因者が多数存在
血友病は、血液凝固因子の中の第VIII(8)因子または第IX(9)因子が生まれつき低下または欠乏している病気です。
第VIII因子や第IX因子の働きが、どのくらいあるかを示す“凝固因子活性”(%)は、血友病の診断や、治療の効果の判定に重要です。
しかし、凝固因子活性を測定する時に用いる検査試薬(APTT試薬など)や検査方法は多種類あることから、1つの血液検体を測定しても、各々の凝固因子活性に差が出ることがあります。それにより時には、診断が難しくなったり、治療効果の判定がうまくできなかったりする可能性が生じます。
一方、保因者診断の検査は、凝固因子活性を測定する凝血学的検査(血液凝固検査)と、第VIII因子や第IX因子の遺伝子の中から血友病を引き起こす原因となる“変異”を直接的に検出する遺伝子検査(遺伝学的検査)があります。
血液検査に比べて遺伝学的検査は、保因者診断に非常に有用な診断方法です。しかし、遺伝学的検査は、通常の保険診療で受ける臨床検査ではなく、研究として行う遺伝子解析を利用した特殊な診断方法になります。
そこで、血友病の凝血学的検査と遺伝学的診断法を確立するために、本研究を行ないます。
何故この研究をするの?
遺伝子解析を応用した保因者診断を確立させる必要性
軽症型の患者さんの出血の回数は少なく、程度は軽いとされているので、凝固因子活性が低いことが診断時に重要です。しかし、検査に用いる試薬や機器・方法によっては、もしかすると、血友病の診断に至らない場合もでてくるかもしれません。
現在の血友病の治療は、凝固因子製剤の補充療法です。治療効果の判定には、凝固因子活性が重要な目安になっています。近年は、特に多くの特徴をもった半減期延長型製剤などの凝固因子製剤が登場してきました。
これらのことから、これまで以上に正確な凝固因子活性の得ることが必要になってきました。
一方、女性の凝固因子活性は多くの生理学的な要因が影響を及ぼすことから、保因者診断の血液凝固検査で、正確な保因者診断の判定をすることは難しいものです。
遺伝学的検査は、遺伝子から直接“変異”を検出することから、保因者診断には非常に有用ですが、現状では大学の研究で行っている特殊な検査(遺伝子解析)であり、一般的な病院での保険診療でうける臨床検査ではありません。
これらのことから、保因者診断方法を臨床検査として用いられるぐらいに、しっかりとした検査法にすることが必要になってきました。
研究の目的
患者さん、保因者診断を希望する女性や保因者女性のために、血液凝固検査法や試薬を検証し、凝固因子活性測定法の適正化、標準化を目的にします。
保因者診断においては、分析的妥当性と臨床的妥当性について検討を重ねて、臨床検査としての実効性を確立することを目的にします。