研究内容01
一覧はこちら血友病に対するゲノム編集治療の開発(01)
近年、海外でアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(※)を用いた遺伝子治療臨床試験が成功しています(図)。一回の投与で凝固因子製剤投与の必要性が長期にわたりいらなくなります。私達もサルを用い、1回の投与で10年もの効果を確認しています。一方で、この遺伝子治療は、肝臓の細胞が増える赤ちゃんや子供のときには効果が持続しません。そこで、本研究では、子供の時の血友病の治癒を目指したゲノム編集の開発を行います。
- ※アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターとは
- アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒトに感染するウイルスですが、インフルエンザやHIV等と違い、病原性がないウイルスです。健康な方でも過去に感染をしている可能性があります。AAVベクターとは、AAVが増えるのに必要な部分を、発現させたい遺伝子(血友病なら凝固因子)に置き換えて、AAVの感染する力だけを使って、遺伝子を運ぶようにしたものです(図)。ベクターとは、遺伝子の運び屋を示します。AAVベクターは、凝固因子をつくる肝臓に効率的に遺伝子を運ぶことができます。AAVは安全性や効果が高く、遺伝子治療でもっとも期待されているベクターで、実際の臨床応用も行われています。
なぜこの研究をするの?
血友病Aの治療法確立を目指す
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療臨床試験がすすんでいます。AAVベクターは細胞の染色体DNAに組み込まれないために安全性が高い方法ですが、子供の時にAAVベクターを投与すると発現した細胞が分裂するに従って、遺伝子が徐々に希釈されるために治療効果が持続しません。そこで、本研究では、血友病の原因となる遺伝子自身を修飾(修復)することで永続的な治療効果を目指します。凝固因子は肝臓の肝細胞で作られますので、肝臓の細胞に遺伝子を修復する(ゲノム編集)の道具をAAVベクターを用いて運ぶことができます。AAVベクターが消えても遺伝子が修復されるので、治療効果は生涯つづきます。すでに、本手法で血友病Bマウスの治療に成功しています(図)。この研究では血友病Aに対する治療法の確立、治療効果のさらなる改善、を行います。
研究がどのように役立つの?
子どものころからの治療を可能に
- ゲノム編集技術によって子どもから治療ができる可能性があります。
- 血友病だけでなく、肝臓の遺伝性疾患である代謝異常症などにも応用できる可能性があります。