血友病とは?

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お父様は血友病。それでも子どもを持つことに対して変わらない意志

血友病について学び、未来の診療を一緒に考える情報サイト「みんなで考える血友病診療ネット」を運営する社会福祉法人はばたき福祉事業団です。

今回は幼少期にお父様を亡くされ、そのお父様が実は血友病だったと成人してから知らされたSさんにお話を伺いました。

Sさんは結婚をし、子どもを持つことを考えるようになった矢先に、お母様から「あなたのお父さんは血友病だったのよ」と聞かされたそうです。

それまでお父様の死因については聞かされたこともなく、血友病という病気についても全く知らなかったので、はばたきのLINE相談で悩みや疑問を共有しながら問題を解決していきました。

Sさんのお話が、これから子どもを持つことを考えている保因者の方の励みになれば嬉しいです。

 

結婚後に知らされた父の病名。その時何を感じたか

Sさんはお父様を小さいころに亡くされているとのことですが、その時の様子をお聞きできればと思います。

はい、父は私が2歳の時に他界したので、死んだ時のことは全く覚えてないですし、それどころか父が生きていた時の記憶もありません。父の死因については本当に長い間知らないままでした。

 

ー長い間お父様の死因については知らないままだったのですね。やがてSさんは結婚をされ、お子様を持つことを考えていた矢先に、お母様からお父様の病名を聞かされたそうですね。

そうなんです。今私は32歳でして結婚したのは2年前なのですが、たまたま母と一緒にいた時に「そろそろ子どもを考えているんだよね」と無邪気に喋ったら、1週間ほどして思い詰めたような口調で「実はあなたのお父さんは……」と打ち明けられたのです。血友病だったことと、それから薬害エイズの被害者であることの両方を知らされました。

 

ーその時に初めて”血友病”という病気を知ったのですね。

はい、そうです。初めて聞く病名だったので、さっぱり意味がわからないというのが正直なところでした。薬害エイズについても聞いたことはあったのですが、まさか父親が被害者だなんて想像したこともなくて、頭の中は疑問だらけでした。

 

ーなるほど、とにかくわからないことだらけで、感情の落とし所にも困るという感じだったのですね。

はい。本当にただただびっくりで、何をどうしたらよいのかわからなかったというのが正直なところでした。



インターネットなどで情報収集するも不安は解消されず、はばたきへLINE相談

ーお話を聞いた後で、どのようにして情報収集をしていきましたか?

最初は母に聞きましたが、母も血友病については十分な知識があるわけでもなく、遺伝性の病気だということしか知らない様子だったので、自分でインターネットで情報収集することにしました。

 

ーインターネットで調べて、疑問は解消されましたか?

血友病という病気の概要や薬害エイズの問題などについては、おおよその理解はできましたが、自分が本当に知りたいことについては知ることはできなかったです。

私たち夫婦はこれから子どもを持つことを考えていたので、やはり生まれてくる子どものことが一番気がかりでした。特に知りたかったのは、

・もし子どもが男の子で血友病だった場合、重症度をどうやって知ることができるのか。

・男の子が生まれた場合、遺伝的には血友病になる確率は2分の1になるが、本当にそうなのか

この2点でした。

特に男の子が生まれた場合の血友病になる確率については遺伝の図などから理解はできていたのですが、自分のこととなると素直に信じることができず、直接話を聞くまでは認めたくないというのが本音でした。

 

ーちなみにSさん自身も、初めて自分が保因者だということを知ったわけですが、今までの生活を思い返して保因者としての症状を感じたことはありましたか?

それが特にないのです。幸いこれまで大きな怪我をしたことがないので、血が止まりにくいと感じたことはありません。また、保因者女性によく聞かれる月経時の出血過多についても、「少し多いのかな」と感じたことはありますが、それも今になってよく考えてみたら程度の話なので、出血傾向についても自分が人と違うと感じたことはなかったです。

 

夫と血友病の問題を共有して今後を話し合う

ーお母様から話を聞いた後ご自身で情報収集をされ、はばたきのLINE相談もご利用されたとのことですが、旦那様へはどのタイミングで血友病の問題を共有されましたか?

母から話を聞いた1週間後くらいですね。LINE相談なども含め自分で色々と調べた後に、医療機関へ行って直接話を聞くことを考えていたので、その時は夫にも一緒に行ってもらおうと思っていました。

 

Sさんのお話を聞いて、旦那様はどのような反応でした?

私が調べた結果や医療機関の話を元に血友病について正しく理解してくれたので、決して悲観的ではありませんでした。生まれてくる子どもについても必要以上に心配することはないと考えていたようです。

 

ー子どもを持つことを考え直すようなことはなかったのですね。

はい。私たち夫婦には子どもをあきらめるという選択肢はなかったですね。二人の関係性も変わらなかったですし、これからの人生プランが変わるようなこともなかったです。

 

クリニックを受診後、中核拠点病院へ。数値データを知ることによって不安は軽減される。

ーご夫婦でまずは近所のかかりつけ医に行かれたそうですね。

はい。最初は私たちが普段通っているクリニックへ行き、そこから中核拠点病院へ紹介していただきました。

中核拠点病院では専門医のお話だけではなく、遺伝カウンセリングも受けました。血友病についてはある程度インターネットで調べて知っていたのですが、やはり専門医の先生からあらためてお話を聞くと全然違いますね。

先ほども申したように、私が一番気になっていたことは血友病の重症度を知る方法と、遺伝的な可能性ですが、重症度については凝固因子の活性を調べることでわかると知りました。

また遺伝に関しても、例え生まれてくる子どもが男の子で血友病だったとしても、本当に大変な重症の患者になる可能性はそこからさらに低いということを教えてくれました。

先生のお話は数値的なデータや事例を参考にしているので、とても説得力がありましたし安心もできました。

 

Sさん自身も保因者として、出産に関する相談などもされましたか?

はい、保因者としての出産時のリスクなどについても聞きました。やはり一番懸念されるのは出産時の大量出血なので、出産時の製剤投与などの処置がスムーズにできる大きな病院で出産することを薦められました。

幸い自宅から車で30分くらいのところに血友病の中核拠点病院があるので、そこで出産する予定でいます。



血友病は数あるリスクの中の一つ。ネガティブに捉えるものではない。

SさんはさらにはばたきのLINE相談も利用されて、血友病のお子様の子育てについても聞いたそうですね。

はい。はばたきさんは血友病のお子様を持つご家庭のネットワークを豊富に持っていらっしゃるので、実際に皆さんどうしていらっしゃるのか聞くことができました。ホームページにも参考になる話がたくさん載っていますし、自分のような悩みを抱えていらっしゃる方が他にもいると思うと心強いですね。

これまで血友病という病気については知ることもなく、自分にとっては本当に初めて踏み入れる世界だったのですが、こんなにも親身になって相談してくれる人たちがいるのだと感激してしまいました。

夫も私も子どもを持つことについては迷いはないのですが、それでもやはり不安はあるので、これからも何かあれば相談に乗ってもらおうと思っています。

 

ー最後に、同じような悩みを抱えていらっしゃる方にメッセージをお願いします。

私は成人してから父の病気のことを知りましたが、自分一人で悩みを抱えずに、はばたきさんのような支援団体や専門医の力を借りながら問題を一つひとつクリアにしていきました。

私の父が血友病だという事実を知った後でも、私たち夫婦は子どもを持つことに対して変わらずに前向きに考えていますし、むしろこれから訪れる出産や子育てを本当に楽しみにしています。

血友病は確かに生まれてくる子どもにとってリスクではありますが、血友病以外にも遺伝的なものも含めて様々なリスクはあると思います。血友病は症状が明らかですし治療法も確立されているので、リスクではあるけれどネガティブに捉えるものではないのではないでしょうか。